小学校

西粟倉独自の「あわくらみらい学」とは?
「あわくらみらい学」は、「総合的な学習の時間」と「生活科」を合わせた、西粟倉村独自の小中一貫プログラムです。
私個人としては、この学びは小学校・中学校だけで途切れるものではないと考えています。村には一園一校ずつの保幼小中に加え、65歳以上の方が参加する社会教育講座「あわくら大学」もあります。これらを見通したとき、すべてが一本の線に繋がる体系化された独自の学問、それが「あわくらみらい学」の目指すビジョンであると考えています。
小学校における具体的なテーマは「木と人の百森づくり」。これは、村が掲げる「百年の森林構想」をもとに考えました。地域に住み、環境、歴史、文化を深く探究していくと、おのずと「百年の森林構想」へ繋がっていきます。また、この学習を通して、子どもたちには経験層の違う地域の様々な方との関わりを持ってもらい一緒に体験をしてほしいです。そのことにより、よって、周囲の人が子どもたちの学びを通して集まってくる、そんな 「人がたくさん集まる森林(=学校)」にもしていきたいです。こうして、この村を出て行ったとしても、心の根底で故郷や村の人を想える、そんな「あわくら愛」をあわくらみらい学で育てたいと考えています。
「あわくらみらい学」では何をしているのか
一般的なカリキュラムのように「この学年ではこれをする」という固定のテーマは設けていません。すべての学習は、子どもたちが活動する中で生まれてくる「やってみたい!」という意欲や「課題意識」からスタートします。
ただ、教師が学習をデザインしやすいよう、2つの大きな柱を設けています。
まず1つ目は「村の自然環境や人に関すること」です。これには、身近な自然環境への親しみと保全、地産地消と地域の農業と生産者、自分たちの消費生活と資源やエネルギーの問題、さらには地域に暮らす外国人の文化や価値観といった国際理解までが含まれます。
そして2つ目は「村づくりに関すること」です。ここでは、身の回りの高齢者とその暮らしを支える福祉の仕組み、身近な歴史と伝統文化の伝承、そして村づくりや地域活性化のために村の維持・再生へ取り組む人々や組織に焦点を当てています。
これらを踏まえ、本校では1年間に2つの単元を扱い、子どもたちの思考に沿って柔軟に学習を組み立てています。過去には、近所のビオトープで見つけたタガメに関心を持って学習を深めた3年生の事例や、「4年生のときにシカが食べないミツマタがどんどん増えていることを知ったから、ミツマタで何か作ってみたい!」という6年生が、「ミツマタ」を使った栞作りを行ない、それを村のふるさと納税の返礼品に同封して発送した事例もありました。
大人がレールを敷いた学習からは、子どもたちの主体性は育ちません。毎年テーマを自分たちで決められるからこそ、教師も子どもと一緒に授業を楽しみ、ゴールを自分たちで作っていく面白さがあります。


これからの時代を生きる子どもたちへの願い
一番の願いは、地域愛をしっかり持ち、人と関わることが楽しいと思える子に育ってほしいということです。
そして、自分の人生に起きる様々な出来事を他人のせいにせず、すべての問題を「我が事(ワガゴト)」として捉えられる人になってほしいです。 将来、政治や社会保障、消費税のあり方、公共のルールといった大きな問題に直面したとき、「自分だけの利益」ではなく「全体やみんなのために何が良いか」を判断できる大人になってほしいのです。
先に紹介した子どもたちが今やっているタガメの探究活動も、問題解決のプロセスは大人になってからの社会課題へのアプローチと全く同じです。自分たちで課題に気づき、行動し、達成したときの「できた!」という高揚感や自己肯定感が、将来、社会問題を自分たちで解決していこうとする態度につながっていきます。その種まきを今、ここでしています。

西粟倉ならではのこと
他校には真似できない一番の資源は、やはり西粟倉村の森林や原生林です。そして、その環境に惹かれて多くの起業家たちが集まっていること。これが西粟倉の産業や地域を見る上でほかにはない最大の強みです。
また、西粟倉村には幼稚園・保育園、小学校、中学校は1校ずつしかありません。しかし、それらが一つの組織「西粟倉村教育ネットワーク」として一体となって協働することで、子どもたちを支え合える温かい関係性と雰囲気があるということも、この村ならではの大きな魅力です。

小学校の子どもたちの様子
子どもたちが最も生き生きして見えるのが、年間を通じて色々な場面で協力して活動する独自の「縦割りチーム」と、そのチームで活動する「ホームタイム」の時間です。
西粟倉小学校は同じ学年の人数が少ない(1学年の児童は平均10人)という弱点があります。固定化されたメンバーでは、人間関係づくりの幅が広がりにくく、十分な人間関係の構築ができません。そこで「弱みを強みに変えよう」と、異学年がどっぷり関わる縦割り活動を充実させました。
文部科学省の柔軟なカリキュラム編成の先駆けとして、特別活動の時間と、国語の「話し合い活動」の時間を組み合わせて、年間35時間の「ホームタイム」の時間を捻出しました。ホームタイムは、1年生から6年生までが全員で集まり、価値観が大きく違う異学年集団の中で「みんなが楽しめる遊びやルール」を話し合い、合意形成をし、共に協働しながら活動していく時間です。高学年は下級生をリードする役割に価値を見出し、低学年は上級生を信頼し、安心感をもつ。この時間が、子どもたちの生き生きとした表情を引き出しています。

今後の展望について
あわくらみらい学やホームタイムなどの新しい取り組みは、始まってまだ2年目です。まずはこの取り組みにおけるビジョンを、新しく赴任してこられる先生方も含めて確実に共通理解にし、継続して実践することが大事だと考えます。
同時に、この考え方を保護者や地域へ伝えていかなければなりません。そのためにはパンフレットや口頭で説明するだけでなく、子どもたちの姿を実際に見てもらうことこそが、保護者の方や地域の方への理解につながると思っています。
そして、あわくらみらい学を通して地域に関わる人を増やしたいと考えています。Iターンで来られた起業家の方々や、もともと地元におられる住民の方々、そういった大人たちが、学校という場や「地域の子ども」を共通の媒体にして連携し、一緒に活動できるようなイベントや学習を仕掛けていきたいと思っています。子どもたちの声を響かせることが、地域の元気に繋がります。

移住を検討されている方へのメッセージ

昔は、学校から帰ると異年齢の子どもたちが近所の境内に自然と集まり、一緒にルールを作って遊ぶコミュニティがありました。今の時代、日本全国でそんなコミュニティが失われつつあります。
しかし、西粟倉小学校には、学校のカリキュラムの中で、その温かい子どものコミュニティを「縦割り活動」や「ホームタイム」でつくろうとしています。
今、西粟倉小学校の教育では、これらを統合した新しい教育の看板として「わがごとプロジェクト」を推進しています。学校で行われる全ての学習活動や、生活の中で起こる問題を、他人事ではなく、「わがごと」として捉え、その問題解決に対して、自ら積極的に関わっていこうとする児童を目指しています。このプロジェクトの一つが、「あわくらみらい学」であり、「ホームタイム」です。
我々は、子どもに地域の様々な大人が関わってくれる安心感のもとで、他ではできないリアルな探究活動を展開し、様々なことをわがごとと捉え、子どもたちが「生きるを楽しむ」「学びを楽しむ」ことができる学校教育を目指し、今、まさに挑戦を始めたところです。
ぜひ、この最高の環境で、ともに、これからの時代を生きる子どもの未来を、そして、この村の未来を作っていきましょう!
(西粟倉小学校 高本英樹校長)